Uberの創業から成功するまでの物語。元CEOトラビス・カラニックへのインタビューなどに基づき、これまでのUberの様々な内幕が書かれています。
■トラビス・カラニック
表舞台に登場した時点で創業時のゲイツやジョブズ、ザッカーバーグより年齢の高かったトラビス・カラニックは、それ以前にB級起業家として、ポストITバブル期のサンフランシスコのベンチャー業界に長らくくすぶっていた人物だった。
ロサンゼルス生まれで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校でコンピュータエンジニアリングを専攻していたが中退し、クラスメイトが創業したスカウアという会社で働き始めた。スカウアはナップスターの原型で、創業後まもなくエンターテインメイト業界に訴訟を起こされて倒産した。カラニックはスカウアのファイル共有サービスという概念を拡張して、次の企業レッド・スウッシュを立ち上げる。訴訟を逆手に取り、エンターテインメント企業向けの合法なP2Pソフトを作ることで、「訴えた側を顧客にしよう」と考えた。6年後、カラニックはレッド・スウッシュをソフトウェア配信最大手のアカマイに1870万ドルで売却した。これによって、31歳のカラニックは約300万ドルを手に入れ、エンジェル投資家兼起業アドバイザーとして、短期間のキャリアを築いた。
ウーバーは2010年にサンフランシスコ市から初の業務停止命令を受けて以来、西はシアトルから東はニューヨーク、果てはパリやデリーに至るまで、世界各地で敵対勢力と抗争を繰り広げてきた。多くの場合、喧嘩っ早いカラニックがメディアに挑発的なコメントを残したり、侮辱的なツイートを連発したりし、事態をさらにこじらせてきた。
カラニックの世界観によれば、ウーバーのすべてのビジネスモデルの基盤をなすのは、既得権益を保持し、イノベーションの妨げにしかならない、消費者の利益を置き去りにした時代遅れの法律に戦いを挑むことだ。タクシー営業許可証と公定統一運賃という概念そのものが、タクシー供給量の抑制と運賃の高額化を招いており、どちらも乗客の不利益にしかならないというわけだ。
ウーバーのアイデアを最初に思いついたのは、実はカラニックではない。ウーバー創業後丸1年もの間、カラニックは同社とパートタイムで関わっていたに過ぎない。とは言え、ウーバー創生の直後からカラニックが立ち会っていたことは事実であり、その抜きんでた洞察力によって、単に誰かの面白い思いつきだったものを、紛れもない革新的なアイデアへと変換したのはカラニックに他ならない。
ウーバーがただの着想から、ユニコーン企業の中でも最大手となるまでの短期間に、カラニックは情け容赦ない、共感力に欠けた、他人のルールは徹底して軽視するその性格によって、世界的に名を知られるようになった。
表舞台に登場した時点で創業時のゲイツやジョブズ、ザッカーバーグより年齢の高かったカラニックは、それ以前にB級起業家として、ポストITバブル期のサンフランシスコのベンチャー業界に長らくくすぶっていた人物だった。ウーバーとは、まさに絶好のタイミングで巡りあった。
著者 アダム・ラシンスキー
フォーチュン誌エグゼクティブ・エディター フォーチュン・ブレインストーム・テック・カンファレンス論説員 フォーチュン・グローバル・フォーラム共同議長 専門はテクノロジー・金融。シリコンバレーとウォール街をフィールドとするトップジャーナリストの一人として知られ、「フォーチュン」誌ではアップルの他、グーグルやHP等に関する特集記事を多数執筆。 2012年に上梓した『インサイド・アップル』は、ニューヨーク・タイムズ紙ベストセラーとなった。FOXニュースでたびたび解説を担当している。
帯 チューレーン大学教授 ウォルター・アイザックソン |
帯2 ジャーナリスト スティーブン・レヴィ |
帯3 クライナー・パーキンス会長 ジョン・ドーア |
帯4 セコイア・キャピタル パートナー マイケル・モリッツ |
帯5 作家 ニック・ビルトン |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第一章 風雲児、中国を走る | p.5 | 21分 | |
第二章 補助輪を付けていたころ | p.37 | 14分 | |
第三章 経営難 | p.59 | 19分 | |
第四章 即興演奏(ジャミング) | p.89 | 12分 | |
第五章 創成期 | p.107 | 19分 | |
第六章 トラビス、ハンドルを握る | p.137 | 22分 | |
第七章 成長痛 | p.171 | 25分 | |
第八章 巨大企業(ジャガーノート) | p.209 | 18分 | |
第九章 運転席 | p.237 | 17分 | |
第十章 自動運転車の未来 | p.263 | 14分 | |
第十一章 中国で出し抜かれる | p.285 | 12分 | |
第十二章 サンフランシスコの長い散歩 | p.303 | 25分 |