実行計画書は変化に対応できない
初期条件に振り回されずにプロジェクトを進めるためには、「成果物を起点とした実行計画」のあり方への反省が重要である。
1つ1つの作業を最終ゴールにつなげるために、いつどこで何をするかを示す工程表、実行計画書(WBS)を作成する。しかし、プロジェクトの序盤戦で完成度の低いWBSを作ってしまったがために、無用の混乱を引き起こしてしまう事例が多い。WBSしても、「目標」「制約」「リソース」という、プロジェクトを構成する最も根本的な3要素が変化する。いくら予定通り順調に開発を進めたとしても、いきなり追加の要望が投げ込まれたり、仕様が変更になる。
各メンバーのコラボレーションが重要
プロジェクトマネジメント活動とは、その必要性を十分に理解した上で、「いかに省略できるか」にプロジェクト成功の鍵がある。どうすれば面倒な管理をせずにいかにメンバー同士のコラボレーションを生み出せるのか、という視点でプロマネの役割を見直す。チームワークが働いていたら、中央集権的にすべてをコントロールしようとする努力は不要になる。
様々な背景、知識、動機を持つバラバラな人たちを組織化し、1つの方向に向かう流れを生み出していくためには、小難しくて膨大な資料は、かえって妨げになる。WBS的な表現は、適しているとは言い難い。誰もが読みやすく、理解しやすいプロジェクトの全体図「プロジェクト譜(プ譜)」こそが、使い勝手が良く、実際に使えるツールである。
プ譜とは
プ譜は、時系列的な遷移も含めたプロジェクト全体像を可視化するための記述方式である。記述要素は5つ。
①獲得目標
プロジェクトで目指すゴール、成し遂げたい目標実現、課題解決
②勝利条件
「獲得目標」が達成できた、実現したと言える基準。勝利条件は、プロジェクトの進む具合によって変化・更新される。
③中間目的
「勝利条件」を達成するために、自分自身やユーザー、協力者などが、「どんな状態になるべきか?」という「あるべき」状態
④施策
「中間目的」を達成するために行う具体的な作業・行動
⑤廟算八要素
プロジェクトを行うための所与のリソース、置かれた環境
・メンバー/人材
・予算規模
・納期/リードタイム
・クオリティ
・ビジネス
・環境
・競合
・外敵
これらの関係性を1枚のシートで記述し、プロジェクトの局面ごとに更新していくのがプ譜の特徴である。更新はプロジェクトに起きた変化や対応した内容を将棋の局面図のように1局面1シートにする。
プロジェクトの未知・不確実性に対し、まずは暫定的な仮説を立てる。それをチームメンバーで共有する。そして新たに遭遇した事象や獲得した情報など、変化する状況への対応を記録する。