海外進出の手段としてのM&A
人口減少によって市場の拡大が難しい日本企業は、どこに活路を見出すべきか。世界のGDP成長率は2019年予測3.4%に対し、日本は0.9%、アメリカは2.4%、ユーロ圏は1.2%である。現在、世界の経済成長を牽引する地域は、アジアの5.5%である。アジア諸国は、人口増加を背景にこの先も継続して経済規模が拡大していく。その結果、世界のGDPの内、日本を除くアジアが占めるシェアは2019年29%から2050年49%になると予想されている。
日本企業は、これまでのように現地の日系企業だけを相手にしていては、現地の成長マーケットに入り込むことはできない。真の意味で海外進出するためには現地の消費者や非日系の現地顧客を開拓しなければならない。そこで有効なのは、事業基盤が構築された現地企業を買収し、その経営資源を活用することである。現地の顧客や仕入先、外注先などのサプライチェーン、若く意欲ある従業員といった、自社では容易に構築できない有形無形の資産を保有する現地企業を買収することによって、タイミングを逃さずに短期間で本格的に市場参入することが可能になる。単独で事業基盤を構築するまでに浪費する時間とコストを考えれば、M&Aは大きな効果が期待できる有力な選択肢である。
今後M&Aによる再編が進む
日本の多くの産業は、既に成熟段階もしくは衰退段階に入っている。成熟段階に入った産業において、新たな成長を目指すためには、従来の延長線上にある発想や組織運営ではなく、異業種間の枠を超えた再編が活性化していかざるを得ない。また、国内で再編を進めて基盤を整える一方、海外での営業活動をさらに強化することも不可欠だ。つまり、既存の企業においても、M&Aは再興のために必須の手段である。今後、以下の要因によって日本でもM&Aによる再編が進むと考えられる。
①どの業界も大手4社に集約される
日本では金融機関と総合商社が産業の発展に大きく寄与しており、各銀行の文化やカラー、総合商社の系列にしたがって4社に集約されてきた。
②上位10社のシェア10%、50%、70%の法則
売上上位10社のシェアが10%になると「成長期」に入り、業界再編が始まる。次に50%になると「成熟期」に入り、最後に70%まで進むと4社程度に集約される。
③6万拠点の法則
国内において6万拠点は、ビジネスの臨界点であるため、拠点数がこの数に達すると業界再編が起こる。
④1位企業10%交代の法則
上位3〜4社の企業はほぼ固定されているのに対し、トップ企業は毎年、10%のビジネスで交代している。
⑤Winner-Take-Allの法則
シェア上位数社による市場寡占化は進む。